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「波動が共鳴」の珍理論

まずはとある宝石屋での私の実体験

30人ほどの客を集めセミナー
「宝石を体の不調な個所に当てると、身体の不調が治る」と店長

で、それは「量子力学によれば素粒子は弦でできていて
人間の身体も当然弦でできている
宝石からの波動が弦の振動に作用した結果なのだ」と

素粒子が点ではなく、一種のひものようなもの(弦)であるとは
超弦理論と呼ばれる理論で与えられる描像

この世の素粒子をこのように記述すると
現代素粒子物理学が抱える多くの問題が解決されると期待されている

そこでは素粒子の種類の多様性は弦の振動様式の違いに起因するとされる

ところでこの超弦理論、今の段階では仮説
仮説である、とはその正しさはまだ実験的に証明されていない、ということ

思うに、仮説を仮説と明示せず説明に使う手法はフェアとは言えないが
しかし、それより重大な問題がここにはある


量子力学では
「物質の構成要素は粒子でもあり波でもある」
とされる

これは仮説ではなく定説
(厳密にはこの言い回しはmisleadingだが、細かいことは省く)
つまりこれは
実験により確かめられ実証されている事実である
ということ

量子力学で記述される原子や分子・素粒子などの微視的な世界では
粒子性と波動性が共存する

その意味で物体に何らかの波動を作用させて
物体の状態を変化させる
ということは一般的には
考え方としてありえる内容

マイクロ波を照射して
食品中の水分子の量子力学的「回転状態」を励起し
水温を上げると共に摩擦を起こさせ
食品を加熱する「電子レンジ」はその好例

この場合の「波動」とはもちろんマイクロ波
過不足なし、かつ明瞭


巷の「量子力学」でよくある
「物体(身体)に波動を作用させて云々」という議論

まず、この「波動」とは一体何であるのか

マイクロ波なのか赤外線なのか可視光なのか
それともこれら電磁波ではなく他のものだとしたらそれは何なのか

そこが明確に定義されず、単に「波動」とのみうたっている議論は眉唾
科学的議論ではないと思ってかかった方がまずは正解だろう

それは科学的根拠のない、単なる量子力学のイメージに乗っかった似非科学の可能性が高い


波動の例として電磁波

物質系は電磁波のエネルギー(電磁エネルギー)を吸収するが
その為には物質系の固有周波数と電磁エネルギーが「共鳴」
即ち同調する必要がある

電磁波と言っても、電波、赤外線、可視光(普段目で見ている光)、紫外線、X線、ガンマ線などと
エネルギー(波長)に応じて様々な呼び名がある

大雑把に言うと、分子の回転運動はマイクロ波(電波の一種)に共鳴する
つまりマイクロ波を照射することで、分子の回転が促進される
先の電子レンジの例がこれ

分子が伸びたり縮んだり、曲がったりまっすぐになったりする振動運動
これには、赤外線が共鳴する

ストーブの遠赤外線を暖かく感じるのは
皮膚の分子振動がこれに共鳴し
振動運動が効率よく促進され
毛細血管が暖められるため

この赤外線はマイクロ波より高エネルギーで短波長

分子には電子状態と言って
分子内に束縛されている電子の
そのさまざまな束縛のされ方に対応する
状態があるのだが
これは我々が目で見る光、可視光に共鳴する

どんな波長の可視光に共鳴してそれを吸収するかは
当然分子の種類による

様々な物体が様々な色を持つのはこのような事情による

この可視光は、赤外線よりさらに高エネルギー

このように物質と電磁波
即ち外部からのエネルギーには共鳴し合う関係があり
共鳴しなければ、エネルギーのやり取りは生じない

例えばマイクロ波を照射しても、電子状態は変化しない


ここで冒頭の宝石商の口上を検討する

仮に超弦理論が正しく、超弦が存在するとして
人の身体を構成する素粒子の弦
その振動は何に共鳴するか

答えは、エネルギーレベルが高すぎて
この地上に共鳴するものは存在しない、が正解

世界で最も高いエネルギーを生成する実験装置、スイスのLHCから見ても
その1000兆倍程度も高いエネルギーでないと
この弦の振動を変化させることはできない

そのようなことは
マイクロ波で電子状態を変えようとする事より
もっともっと、はるかに無謀なことである

更に、弦の振動が変わるということは
素粒子の、すなわち物質の種類が変わることに他ならない

万が一宝石がそばにあるだけで
アップクォークがダウンクォークにでも変化するなら
それは原子核内で陽子が中性子に変化することになり
世の中あっと言う間に不安定核種の放射性物質だらけ

即座に地球から生命が死滅
いやそれ以前に
とても生物が住める地球が誕生する暇がなかっただろう

「手で宝石をかざすと宝石からエネルギーが出て、身体の弦に共鳴して‥」
などといかにも科学的に説明したような体だがとんでもない


このように、明確な根拠を持って考えることが科学的思考

感覚的に「分かった様な感じ」が一番怖い
そしてこの「分かった感じ」を与えて納得させる論調が
この世の中誠に多い

「量子力学」を振りかざして来たら
まずは言葉の定義に注意しよう

その「エネルギー」とは具体的に何か
「波動」とは何か
何が何に「共鳴」しているのか
「共鳴条件」を満たしているのか

突っ込んで考える人の心に偽物の入るスキはない
まずは突っ込んでモノを考える思考の癖を身につけたい

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