不確実情報に振り回されない為に

眼鏡と本

Facebookで個人的つながりのある女性。
スピリチュアルに関する著作もありそれなりに著名ではあるようだが、
またそれなりにデマ拡散にも貢献していらっしゃる(笑)。

2020年11月、米大統領選挙の結果が判明した後の15日、
トランプ推しの彼女はFacebookに、
「トランプ支持派のパレード」と称する写真を添付しつつ

「トランプ大統領の応援パレード
がすごいことになっている模様。
メディアは無視だけど。
これを見て
トランプ大統領も涙したそう」

と投稿。

トロントバスケチーム優勝祝賀パレード

この写真なんだけど、
BuzzFeed Newsのファクトチェックによれば
トランプ大統領支持派のパレードなどではなく
トロントのバスケチームがNBAで優勝した祝賀パレードの写真。
(BuzzFeed Japan籏智広太
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8872bc79a8c2b04852bfeb6f83fc6537f39c196)

確かに言われてみれば、見当たらない。
トランプ応援パレードならあるであろう、
溢れんばかりの星条旗が。

あるわけないよ、カナダだもの。

強烈な文言やimpressiveな映像を駆使した、
「印象操作」によるデマ拡散、
特にSNSの発達した現代にあっては
一人一人に自ずから生じる責任とか
社会への影響といったものにも
今一度注意を向ける必要があるだろう。

印象操作に注意

2021年現在世を混乱に陥れ、
騒がし続けているコロナウイルス。

誤情報の蔓延は震災や大きな災害時の常ではあるが、
コロナ禍もご多分に漏れず。
様々な誤情報・不確かな情報・偽情報が
意図的に、あるいは意図せずして
拡散された。

多様な内容、多様な形態で拡散される偽情報。
それらの中には、
目を凝らすと見えてくる共通の特徴が‥

コロナワクチンはこんなに害悪!?

イギリスMail紙のオンラインバージョン、
41歳の女性が
アストラゼネカ社のワクチン接種後2週間たった今でも
痛みに苦しんでいる、とのタイトルで
写真付きで記事を掲載。

皮膚炎の写真

広範囲に赤くただれた肌が痛々しい。
「日々自閉症の息子の介護をしているが、
それができなくなった」、との本人のコメントも。
日常生活に支障があるのが十分うかがえる写真ではあります。

「結果を示す写真」でどこまで真相に近づけるのか

「○○をしたら××が起こった。
ほらこれが証拠だよ。」
と聞いて
「それはすごいなー」
とか
「それはひどいね」
などという会話は日常レベルではよくあること。

しかし厳密性を旨とする科学的議論では、
これは「三た論法」と呼ばれる典型的なNG論法。

「○○を飲んだら××が治った」式の、
一本槍な「因果証明」は、
広告はじめSNS上の情報でも
本当によく目にするものです。

もしそれが何かを買わせるための宣伝文句だとしたら特に要注意。

それだけでは××の治癒が○○によるものだとは言えません。
他の要因によるのかもしれないし、
自然治癒かも知れないのですよ。

人は「偶発性」を嫌う

まず自然治癒の場合について言えること。

人の認知は
偶発性を嫌い、因果を求める
一種のバイアス(系統的偏り)があります。

起こったことに対しては必ず何らかの「要因」を明らかにしたくなる。
「偶発的に」とか「自然に」起こったという風には思いたくない。

この心理傾向は例えば交通事故では有効ですね。
誰も起こしたくて起こしたわけではない事故。
一体その事故はなぜ起こったのか。
それを突き詰めることで教訓とし、
今後の運転時に活かせるわけです。

なんで事故が起こったのか分からないままでは、
いつまた起こるかも知れない。
気持ち悪すぎますよね。

でもこの認知のバイアスが、
場合によっては本来無関係の事象を
原因と思い込んでしまうことにもつながるのです。

例えば自然治癒なのに、
たまたま処方されていた薬のせいだと説明されると、
例えそれがインチキでもそこに因果を見出してしまい、
まんまと効果のない薬を買わされ続けてしまう。

いやぁ詐欺師というのは本当に、
心理の様々なはたらきをうまく利用してくるものですね。

ポイントは疫学調査

「薬の投与と症状の改善」
というような因果関係が存在するのかどうか、
つまり、
原因と思われているものと結果と思われているものの間には
本当につながりがあるのかどうか、
を判定する手段が疫学調査

因果の関係を明らかにする手段は
今のところこの方法しかありません。

アプローチの仕方は様々にありますが、
基本的かつ分かり易いのは四分割表を用いた評価。

薬とその薬効の例で言えば、
このような表を作成し、

疫学四分割表

それぞれの比率を統計的に調べるのです。

ワクチンの例でも同様で、
ワクチンの作用として皮膚炎が出たというなら、
ワクチンの投与と皮膚炎の所見との関係について、
この表を作成し統計を取り、
その結果を公表すべきです。

情報は結論だけでなくその提示のされ方にも注意

実際に何らかの症状が出た場合は、
個別に症状や原因を分析し
リスクに関する情報を正しく伝える努力が必要。

皮膚炎の写真を見て直ちに判断するというのは、
この表で言うと左上の部分だけを見て
判断していることになるのですね。

このMail紙記事の中で、
イギリス国民保健サービスのSheraz医師は、
「発疹は多くの原因で起こり得るので、
この事例について要因を特定するのは難しい。」

としつつ、

「ワクチン接種に伴う事例のデータは日々更新されており、
何らかの深刻な副反応が発生する確率は低い。
パンデミックの終息の為にワクチン接種は唯一の方法であり、
接種を進めることが必要だ」と言います。

そうは言っても、
接種したからと言ってすべての問題が解決するわけではなく、

個々の行動いかんでは、また感染源にならないとも限らない。

接種自体に不安を感じるのも分かります。

あとは個々人で判断して、ということになるのでしょうが
その判断の為にも正しい情報は不可欠。

簡単にリツイートやシェアができる時代、
自分が誤情報の発信源にならないようにはしたいもの。

少なくとも四分割表の一マスだけを強調する手法は
デマ発信の常とう手段の一つとされてきた事実だけは、
頭の片隅に置いておいてもよさそうです。

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